本書では統計や、データ分析に基づいて答えを求めることを「絶対計算」と定義しています。そして経験と直感に頼る専門家の意見よりも、「絶対計算」の方が優っているという主張をしています。専門家の意見と統計とでどちらの意見が正しかったかという例をいくつも示し、人間は感情や先入観に左右されるため、ほぼ例外なく絶対計算が勝つと述べています。
まず、過去の大量データを利用し、様々な要因がどのような結果に繋がるかを分析する「回帰分析」により、以下のような分析ができ、それらが専門家の意見に勝ったという例を挙げています。
- ワインの値段を回帰分析で判断
- 野球選手の価値をデータで判断
- カジノでギャンブラーがいくら損してもリピートしてくれるか
また、大量の過去データがない場合でも、母集団から無作為にグループ分けをして、どのような違いが起こるか検査する、「無作為抽出テスト」をすることにより、以下のような判断ができると説明しています。
- AdSenseで複数のタイトルのうち、どのタイトルのクリック率が高いかテスト
- 金利を下げるのと、DMの広告に微笑む女の子の写真を使うのと、どちらが新規融資顧客開拓に有効か
また、この例のように、国民から無作為にサンプルを選んで、政策の有効性を検証することができるとも述べています。
- 失業者に求職支援をするのは有効か?->求職支援をした失業者には、その出費を上回る失業手当削減と税収が得られた
さらに、著者は情報処理の発達により以下の例のように専門家の仕事が絶対計算により置き換えられ、人間の役割は絶対計算のための仮説検証の仕事が主になっていき、専門家の地位が下がっていくと考えています。そのため、当然ですが専門家達は大きな反発をしているそうです。
- 医療データベースによる臨床医師の仕事の単純化
- ダイレクトインストラクションによる教師の仕事のマニュアル化
- 映画のシナリオさえニューラルネットワークによって判断されてしまう。(エパゴギクス社の例)
「絶対計算」という言葉はなんだか曖昧で好きではないのだけれども、統計やデータ処理に基づいた意思決定が専門家の直感より信頼できるという点は私も賛成です。情報処理の発達によって、今後もどんどんと今まで専門家が担っていたような領域に侵食していくようなことも容易に想像できます。
ただ、個人的には、データ分析などをするにしても、分析方法の決定(回帰分析の変数設定など)には専門家の関わる余地は大いにあると思います。ある特定分野への専門知識を持ち、基本的な統計知識をもった人が必要とされていくと考えられます。私が先行していた言語処理や、今の仕事の金融などの分野ではそれが当然のように行われているのですが、今後は政治、法律、医療など様々な分野に幅広く応用されていくのでしょう。
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